GIMP ツールボックスには 13 種類の「描画ツール」があり、 (初期設定での配置では) 底部寄りにすべてまとまっています。
以上のツールの共通点は、 マウスポインターを画面上で滑らせてブラシ描画を行う機能です。 このうち、
の 4 つのツールはブラシで「塗る」直観通りのはたらきをします。 鉛筆で描画、 ブラシで描画 (絵筆)、 エアブラシで描画の 3 つは「基本的な描画ツール」という位置付けのため ブラシツール と呼ばれています。
それ以外のツールは塗るのとはまた違った方法でブラシによる画像の加工を行います。
色やパターン (文様) で 塗りつぶす ツールや、
グラデーション をかけるツール、
消しゴム ツール、
パターンやクローン (画像片の写し) を スタンプ するツール、
あるいは透視図法的な変形をする 遠近感のあるスタンプ、
小さな欠点を直す 修復ブラシ、
部分的にぼかし効果をかけるかコントラストを増す ぼかし/シャープ ツール、
擦って色を不鮮明にする にじみ ツール、
部分的に明るくしたり暗くするための 暗室 (覆い焼き/焼き込み) ツール
があります。 GIMP でマウスではなくタブレットを使用した場合の利点が最も強く現れる場面はおそらくブラシツールを使うときでしょう。 高感度コントロールで得られる情報は他には替えがたいものです。 これらのツールには特別にタブレットでのみ利用できる「筆圧感知」オプションがついています。
通常利用される「受け渡し」のしくみに加え、 ブラシツールを利用するより自動化された連携があり、 選択ツールやパスツールが作った「境界線を描画」することができます。 ここで使うブラシツールはどれでもよく、 消しゴムやにじみツールなど特異なものも使えます。 使えるオプションも同じです。 詳しくは 境界線を描画 についての章をご覧ください。
どの描画ツールも Ctrl キーを押しながら使うと特別な効果があります。 鉛筆、 絵筆、 エアブラシ、 インク、 消しゴムの各ツールは「スポイト」に変身し、 画像をクリックすると現在のレイヤーのその場所の画素 (ピクセル) から色を拾い出して GIMP の描画色とします。 ただし消しゴムツールだけは GIMP の背景色とします。 「スタンプで描画」ツールでは Ctrl キーを押している間にクリックした場所が参照始点になります。 「ぼかし/シャープ」ツールは Ctrl キーを押すとぼかしモードから際立たせモードに切り替わります。 暗室ツールは覆い焼きから焼き込みにモードが交替します。
すべての描画ツールに同様の効果があるのが Shift キーです。 直線 が引けるモードに変わるのです。 どの描画ツールの場合も直線を引くにはまず始点をクリックして、 その後に Shift キーを押します。 キーを押したままでポインターを移動すると始点と現在地を繋ぐ細い線が示されます。 Shift キーを押し続けながらそこで次の点を打つと、 直線が描かれます。 この動作を繰り返すと線分が繋がって描けます。
両方のキーを押した状態でのブラシツールは 制限つきで直線を 引くモードになります。 使い方は Shift キー単独での方式と同じですが、 線の傾きは全方位を 24 分割した 15 度刻みの方向のうち最も近いものが選ばれます。 この制限は水平線や垂直線、 あるいは対角的な配置の斜線を引くときに便利です。
大多数のツールオプションがいくつかの描画ツールで共有されています。 ここでそれらのオプションについて説明します。 その他のオプションのうちツール個別で独自に持つものやごく一部で共有されているものは、 それぞれのツールの節の中で説明します。
モード ドロップダウンリスト (引き出しリスト) から描画の適用モードが選べます。 モードが果たす役割について理解するには 不透明度 に対するのと同じく、 ちょうど画像の上に描画を実施するためのレイヤーが別にあって、 そのレイヤーが画像と結合するモードをレイヤーダイアログで指定するところを想像されると最も解り易いでしょう。 モード指定によって多彩な計り知れない特殊効果が得られます。 モードオプションが利用できるのは画像に色を描き加えるツール (鉛筆、 絵筆、 エアブラシ、 インク、 スタンプ) に限られます。 それ以外の描画ツールでは利用できませんが、 ダイアログの統一感をはかる目的で灰色無効表示とされています。 「レイヤーのモード」 に関しては実例を挙げて説明しています。
中には 後述 のような独特なモードもあります。
不透明度スライダーはブラシ操作での透明度レベルを設定します。その効果を理解するには、 現在のレイヤーに直接描いているのではなく、 このツールによってその上に新たに透明なレイヤーが用意されているとみなすことです。 ツールオプションで不透明度を変更したときの効果は、 その仮のレイヤーの不透明度をレイヤーダイアログで変更するのと同じです。 このスライダーは活性レイヤーに描画するブラシツールだけでなく、 すべての描画ツールの「強さ」を調節しています。 消しゴムツールに関して言えば少々混乱しそうです。 「不透明度」が高いほど、 このツールが消した部分の透明感が増す結果になります。
ブラシ選びが、 ポインターを滑らせ描画する過程でツールが画像に及ぼす大きさと刻印の内容を決めます。 GIMP で使えるブラシは様々な種類があります。 ブラシ の節に説明があります。 「インクで描画」ツールを除き、 どの描画ツールに替えても同じブラシが選べます。 「インクで描画」ツールはオプションでの調整を経て特別に構成されたブラシを使用します。 色の現れ方がブラシと関わるのは鉛筆、 絵筆、 エアブラシの筆触ツールだけです。 それ以外の描画ツールではブラシの強度分布しか関係しません。
このオプションでブラシの大きさを緻密に調整できます。 上 下 の各キーで ×0.01 ずつ、 PgUp PgDn の各キーで ×1.00 ずつ増減できます。 マウスホイールでの操作も「設定」で正しく設定すれば利用できます。 ブラシの大きさの変更方法 をご覧ください。
ここでブラシの高さと幅の比を決めます。 このスライダーは -20.00 から 20.00 の間の値をとり、 デフォルト値は 0.00 です。 -20 から 0.00 未満までの負の値にするとブラシの高さが狭まり、 その一方で 0.00 を越し 20.00 までの正の値にするとブラシの幅が狭まります。
このオプションはブラシの中心を軸にしてブラシ刻印を一定の角度に傾け回転します。 したがってブラシ刻印が円形だったり向きのない回転体図形であったりすると変化が見えません。
動的特性オプションは、 入力側のさまざまな動作とブラシの出力パラメーターを結び付けるためにあります。 ペンタブレットで使われる場合がほとんどですが、 その一部はマウスに対しても有効です。
動的特性に関してはさらに 動的特性 で説明しています。
パスや選択範囲に添って描画ツールで描くときに 描画の動的特性をエミュレートする というオプションが選べます。 それらの輪郭線上を筆が進むにつれてブラシの圧力や筆速が変化しているとみなすしくみです。 筆圧は 0 から開始し、 最大圧力まで駆け上がって再び圧力無しまで減圧してゆきます。 筆速は 0 から加速を始め、 描線の終端で最大速になります。
このオプションは 動的特性のオプション で説明しています。
ブラシ描画での「間隔」について思い出してください。 描線は次々と繰り出されるブラシの刻印で成り立っており、 互いの間隔が非常に狭ければ繋がった線の姿になります。 そこで、 スライダーを調節すれば、 整列していたブラシの刻印を散り散りに離すこともできます。
散布は動的特性と結びつけることもでき、 描画の動的特性エディターでブラシの性格づけに利用できます。
このオプションで変化するのはブラシの刻印ではなく筆の「軌道」です。 描いた線のブレを抑えます。 マウスを使う描画が容易になります。
このオプションはチェックを入れると 品質 と ウエイト の 2 つのスライダーが現れます。 ご自分の技量と好みに合わせて初期値より増減が可能です。
ウエイトを高く設定すると筆跡が硬くなりがちです。
The incremental checkbox does not seems to work as everyone expect. If it is deactivated (the default value) the maximum effect of a single stroke is determined by the opacity set in the opacity slider. If the opacity is set to less than 100, moving the brush over the same spot will increase the opacity if the brush is lifted in the meantime. Painting over with the same stroke has no such effect. If Incremental is active the brush will paint with full opacity independent of the slider's setting. This option is available for all paint tools except those which have a 「rate」 control, which automatically implies an incremental effect. See also 「レイヤーのモード」.
GIMP の描画モードを使った例を以下に示します。
不透明度を 100% 未満としたどんな描画ツールで描いても、 この大変便利なモードは透過表現によらない方法で描画を果たす可能性を探ります。 つまり筆書きや塗りつぶしに対してすばらしい点描による紋様を描きます。
このモードでは現在のレイヤーの透過部分にのみ描画できます。 不透明度が低いところほど強く描画されます。 つまり完全不透明な部分には何も描画できませんが、 完全透過な部分での描画効果は標準モードと同じです。 描画するほどにつねに不透明度が増す結果になります。 当然アルファチャンネルの無いレイヤーでは何の意味もありません。
上の例の図では最前面のレイヤーにウィルバー君が描かれ、 その周りは透明です。 その下のレイヤーは一様にライトブルーで塗られています。 次にそのレイヤー全体を選択してから、 選択範囲を塗りつぶす オプションが有効な状態で塗りつぶしツールを使いました。 塗りつぶしにはパターンを使用しています。
つぎの画像 (下図) には 2 つのレイヤーがあり、 上側が現在活性化しています。 あらかじめ青で横向きに 2 本の線が引かれています。 次に透明度を 100%、 50%、 25% と変えながら赤で鉛筆による描線をしました。 レイヤーの透明及び半透明な画素にのみ描画されています。
このモードは描画色を消去して不完全透明にします。 そのはたらきは 色を透明度に フィルターに似ており、 ブラシでなぞった部分に適用されます。 このモードはアルファチャンネルのあるレイヤーでのみ有効で、 無い場合は標準モードと同一であることにご注意ください。
上の例の図では、 白色で塗りつぶしたところ、 ウィルバー君の白い部分が消えて青い背景が透けて見えます。
次の例の画像は 1 層のレイヤーだけ、 すなわち背景レイヤーだけを持っています。 背景レイヤーはスカイブルーに塗られ、 描画色は赤色です。 鉛筆による描線が 3 本あります。
青い部分に対応する色を適用: 青色だけが消えた。
赤い部分に対応する色を適用: 赤色だけがそのいずれの透明度でも消えた。 消去された部分は透明になった。
レイヤーの背景色に用いられているスカイブルーを適用: この色だけが消えた。