「あたかも本物のような描き心地」に近付けるため、 ブラシ類の操作のしくみには実際のブラシのパラメーターをひとつ以上接続します。 これが動的特性です。 実践例を挙げれば、 鉛筆の幅を尖筆またはマウスの速度に応じて変化させたり、 尖筆の筆圧に応じて彩度を変えてみたり、 ブラシがキャンバス上をなぞる方向によって色を変化させたりと、 いろいろ試せます。 自己流の設定を保存しておいたなかから選択して再利用できるほか、 設定済みプリセットも若干数用意してあります。 動的特性 (ダイナミクス設定) は描画タブレットで使うために開発されましたが、 その一部はマウスでの利用も可能です。
動的特性の目標は描画ツールの動作をより物理的な (「本物の」) 道具のようにふるまわせることです。
ツールオプションダイアログの動的特性の区画は、 左から順に、 プリセット選択ボタン、 現在のプリセットの名前、 右端に編集ボタンがあります。 プリセット選択ボタン をクリックすると利用可能な動的特性プリセットの簡易一覧表ウィンドウが現れ、 ここで他のプリセットを選んで替えられます。
描画の動的特性ダイアログの呼び出し方はつぎのいずれかです。
画像ウィンドウのメニューより
→ →動的特性プリセットの選択ボタンをクリックすると現れる簡易プリセット一覧表ウィンドウの右下にある
ボタンをクリック「描画の動的特性」ダイアログはドッキング可能です。 その扱い方については 「ダイアログとその合体」 の節を是非ご覧ください。
「描画の動的特性」ダイアログでも先に紹介した簡易プリセット一覧表ウィンドウと同様にすべての利用可能なプリセットからひとつを選択できます。 さらにダイアログ下端には 5 つのボタンがあります。
選んだプリセットに変更を加えるには 「動的特性を設定」ボタンをクリックすると出てくる「動的特性エディター」を使います。
「新しい動的特性を作成」ボタンはプリセット一覧表に「名称未設定」という名の項目を新たに加え、 「動的特性エディター」を開きます。
「動的特性を複製」ボタンは選んだプリセットの複製を作成し一覧表に加えます。
「動的特性を削除」ボタンは選んだプリセットを削除します。
「動的特性を更新」ボタンは一覧表を読み込み直します。
動的特性エディターの呼び出し方はつぎのいずれかです。
各ツールオプションダイアログ内の動的特性の欄の右端にある ボタンをクリック
「描画の動的特性」ダイアログの一覧表の下にある 「動的特性を設定」ボタンや 「新しい動的特性を作成」ボタンをクリック
「動的特性エディター」を開くと最初に現れる「対応状況の一覧」はたくさんのチェックボックスでできており、 それぞれクリックするたびに入力と出力の接続の有無が切り替わります。
注記 | |
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GIMP に同梱の動的特性プリセットは動的特性エディターで開くとどの設定項目も灰色無効になっていて変更ができません。 調整したいオプションがあるときはインストール済みプリセットから複製をとって変更するかもしくは新たに動的特性プリセットを生成して調節します。 |
動的特性エディターははじめに多数のチェックボックスからなる「対応状況の一覧」を表示し、 ここでどのブラシパラメーターが尖筆やマウスのどの操作状況に対応づけられるかを指定できます。 ありとあらゆるパラメーターをいくつでも、 さらにどんな組み合わせも設定に加えられますが、 あまりたくさん接続しすぎない方がたいていうまくいきます。
縦の列は 不規則 と フェード を除きそれぞれが尖筆やマウスの各動作を示しています。 描画タブレットならどの操作状況も活用できます。 一部の機能はマウスでも利用可能です。 活用したい操作状況の列のチェックボックスに印を入れ、 表現したいパラメーターに接続します。 以下の説明はいずれの機能も初期設定の場合のものです。
筆圧: 尖筆をタブレット表面に押しつける強さの変化をツールの動作のどの局面に反映させるかが指定できます。
筆速: (マウス可) ブラシの移動の速さです。
方向: (マウス可) ブラシの移動方向です。
傾き: 尖筆をタブレット表面に立てる角度に伴ってこの相関的要素が変動します。
ホイール: 尖筆を軸方向に回転させたりエアブラシペンに付属するホイールを設定するのに伴って出力が変動します。
不規則: (マウス可) ここに繋いだオプションは不規則に変化します。
フェード: (マウス可) ここに繋いだオプションにフェード効果がかかります。 ツールオプションダイアログの動的特性オプションでフェードインかフェードアウトのどちらにするか決めます。
Each row shows a brush parameter and seven checkboxes, one for each action. You connect the parameters to the actions by clicking the appropriate boxes. Clicking on a selected box will unselect the connection.
筆圧: [個別詳細設定で入力・出力曲線が単調右肩上がりであれば]筆圧を軽くするにつれ透明感が増し、 逆に強く尖筆を押しあてるにつれ透過しなくなってゆきます。
筆速: (マウス可) [同上]尖筆やマウスの動きをすばやくすればするほど透明度が増します。
方向: (マウス可) 尖筆やマウスの移動する方向に従って不透明度が変動します。 やや出力に不規則なばらつきが起きるかもしれません。
傾き: 不透明度が尖筆を立てる角度により変化します。
ホイール: TO DO
不規則: (マウス可) 不透明度はツールオプションの不透明度スライダーで定めた値を上限とする範囲で不規則に変化します。
フェード: (マウス可) [個別詳細設定が同上のとき]完全透過な状態で筆が入り、 ツールオプションの不透明度スライダーで定めた不透明度で終わります。
筆圧: [個別詳細設定で入力・出力曲線が単調右肩上がりであれば]筆圧を軽くするにつれブラシが細くなり、 逆に強く尖筆を押しあてるにつれブラシの幅が増します。
筆速: (マウス可) [同上]尖筆やマウスの動きをすばやくすればするほどブラシが細くなります。
方向: (マウス可) 尖筆やマウスの移動する方向に従ってブラシのサイズが変動します。 やや出力に不規則なばらつきが起きるかもしれません。
傾き: ブラシのサイズが尖筆を立てる角度により変化します。
ホイール: TO DO
不規則: (マウス可) ブラシのサイズはツールオプションのブラシサイズスライダーで定めた値を上限とする範囲で不規則に変化します。
フェード: (マウス可) [個別詳細設定が同上のとき]筆は細く入り、 ツールオプションのブラシサイズスライダーで定めたサイズで終わります。
TO DO
ブラシで塗られる色はツールボックスで示されている描画色が使われます。 しかしこれは初期設定での場合であり、 動的特性エディターで色の出力パラメーターに接続したときは、 現在活性化しているグラデーションから色が採られます。
筆速: (マウス可) [個別詳細設定で入力・出力曲線が単調右肩上がりであれば]ゆっくり筆をすべらせているときはグラデーションの右側から色が採られます。 尖筆やマウスの移動が速くなるにつれグラデーションの左寄りの位置の色が使われます。
方向: (マウス可) マウスや尖筆の移動する方角がグラデーションのどの位置の色を使うかを決めます。 効果がいささか乱れぎみのようです。
不規則: (マウス可) 色はグラデーションを構成する色から不規則に採られます。
フェード: (マウス可) [個別詳細設定が同上のとき]はじめの色はグラデーションの左端から採られ、 筆を進めるにしたがって徐々に使われる色がグラデーションの右へ変化します。 ツールオプションでフェード効果の性格を決めます。
硬さオプションは輪郭が曖昧なファジーブラシを使うときだけ役に立ちます。
筆速: (マウス可) [個別詳細設定で入力・出力曲線が単調右肩上がりであれば]ゆっくり筆をすべらせているときにブラシの輪郭が際立ち、 速く動かすにつれだんだんとぼやけた線になります。
不規則: (マウス可) ブラシの輪郭は不規則にぼやけたり際立ったりします。
フェード: (マウス可) [個別詳細設定が同上のとき]筆を走らせるにつれだんだんと輪郭がはっきりしてきます。 ツールオプションでフェード効果の性格を決めます。
TO DO
このパラメーターを利用するときは必ずツールオプションの縦横比スライダーでデフォルトの 0.0 以外の値にしておかなくてはいけません。 縦横比を負の値に設定したときはブラシの高さが一定に保たれ幅だけが変化します。 縦横比を正の値に設定したときはブラシの高さだけが変化します。
筆速: (マウス可) ブラシの縦横比 (高さと幅) が筆の速さによって変動します。
方向: (マウス可) ブラシの縦横比がブラシの移動方向によって変化します。 効果がいささか乱れぎみのようです。
不規則: (マウス可) ブラシの縦横比は不規則変化します。
フェード: (マウス可) [個別詳細設定が同上のとき]ツールオプションで縦横比を正の値にすればブラシの高さが描き始めに最大値をとり筆を進めるにつれ徐々に縦横比から得られる値に近づきます。 また縦横比を負の値にすればブラシの幅が描き始めに最大値をとり筆の移動に伴い減少しやがて縦横比に基づく値になります。 ツールオプションでフェード効果の性格を決めます。
間隔とはブラシが走りながら続けざまに描く個々のブラシ刻印どうしの距離のことです。 このオプションで尖筆やマウスの使い方が間隔に変化を及ぼします。
筆速: (マウス可) [個別詳細設定で入力・出力曲線が単調右肩上がりであれば]ブラシの歩幅は描く速さに応じて広くなってゆきます。
方向: (マウス可) 間隔がブラシの進む方向によって変化します。 効果がいささか乱れぎみのようです。
不規則: (マウス可) 間隔は不規則変化します。
フェード: (マウス用) [個別詳細設定が同上のとき]大きな間隔で描きはじめ、 だんだんと間隔が狭くなります。 ツールオプションでフェード効果の性格を決めます。
このオプションは効果が経過時間に依存するツール、 すなわちエアブラシ、 ぼかし/シャープ、 にじみの各ツールに適用されます。
これらのツールの色の出具合を速くしたり遅くしたりできます。 「割合」の量はツールオプションダイアログの割合スライダーに基づきます。
エアブラシでのみ効果が出ます。 拡散傾向を調節します (この値を大きくすると、 「割合」と同じく色乗りが速くなり、 色づきがブラシ中心部と同等な領域がブラシ内で比較的大きくなります。 この値を小さくすると色乗りが遅くなり、 ブラシの中心部と周辺部との着色の時間差が増します)。 「流量」の値はツールオプションダイアログの割合スライダーに基づきます。
普通であればブラシが通った線にそってブラシ刻印が整然と並んで描かれます。 散布パラメーターを加えるとブラシ刻印がその線を外れて散らばります。 散らばりの度合いはツールオプションダイアログの散布スライダーで設定します。
筆圧: [個別詳細設定で入力・出力曲線が単調右肩上がりであれば]筆圧が弱いときは「散布」スライダーで設定したとおりの程度でブラシ刻印が散らばります。 尖筆を押しあてる強さを増すと乱れが収まってきます。
筆速: (マウス可) [同上]ゆっくり筆を運んでいるときは散布度スライダーどおりにブラシ刻印が散らばります。 速くなるにつれ散らばりが抑制されます。
方向: (マウス可) 散布効果はブラシの進む方向によって変化します。 効果がいささか乱れぎみのようです。
不規則: (マウス可) 散布の度合いが不規則変化します。
フェード: (マウス可) [個別詳細設定が同上のとき]描きはじめは全く散らばりが起きず、 筆が進むにつれ散布度スライダーで設定した程度まで徐々に散らばってきます。 ツールオプションでフェード効果の性格を決めます。
現在のオプション設定がしっくり来ないときは動的特性エディターの個別詳細設定で精密調節しましょう。 ダイアログ上部の引き出しメニュー (最初は
) をクリックすると上図のようにすべてのパラメーターのリストが現れますのでここから調整したいパラメーターオプションを選びます。調節したいパラメーターのダイアログは引き出しメニューから選びます。 するとダイアログの内容が個別詳細設定に入れ替わります。 上側のグラフのいろいろな色で引かれた関数曲線 (カーブ) はいずれも 「操作状況」と出力パラメーターとの相関を示しています。 いずれも左下隅がグラフの原点です。 個別詳細設定ダイアログ下部の各チェックボックスの左隣の色は上部グラフのカーブの色と一致します。 精密調整をするにはチェックボックス該当行をクリックしてハイライト化してから、 カーブの線をクリックして曳き変形します。 選んだカーブは ボタンをクリックすると初期設定の右肩上がりの比例直線に戻ります。
ダイアログで選んだ素気ない例ですが、 何かこの機能を使うヒントになればと考え示しました。 他の組み合わせも気軽に試してみましょう。 この例では描画色を青 (#0000FF)、 背景色を黄 (#FFFF00) にしてあり、 フェードの長さを 200 ピクセル、 ブラシのサイズを 72 としました。 それ以外の設定はつぎの 4 つの例の変化を除きすべて初期設定のままです。
「例図 1」はブラシのサイズパラメーターにフェード効果を接続しました。 それ以外のオプションは初期設定のままです。 ブラシの大きさがほぼ 0 から出発し、 徐々に大きくなって、 ツールオプションダイアログのブラシサイズスライダーで決めたサイズまで膨らみました。
「例図 2」も引き続きブラシサイズとフェードツールを接続しつつ、 さらに の詳細設定でフェードのカーブを「例図 5」のように曲げてみます。 ブラシの幅がはじめ 0 から出発して設定最大幅に膨らみ再び 0 まで収縮しました。
フェードは全体をグラフの x 軸の左から右までの範囲で示してあります。 y 軸はブラシのサイズを定めます。 グラフの底辺でブラシサイズが 0 となり、 グラフの最上部にゆくとブラシサイズはブラシオプションダイアログのスライダーで設定したサイズいっぱいにまで拡大します。 例図とカーブを見比べてその関係を確かめましょう。
「例図 3」はブラシサイズパラメーターとフェード効果との接続を断ちました。 色パラメーターをフェード効果に接続し、 その相関カーブを「例図 6」のとおりに定めました。 描きはじめの色はグラデーションの左端から採られ、 だんだんとグラデーションの右寄りに採色位置が移って右端の色を採り、 再び徐々に左寄りへ色を採るようになって左端の色で終わります。
先の例と同じく x 軸にフェードの全長が対応しています。 カーブがグラフの底辺に近づくと色はグラデーションの左端付近から採られます。 カーブがグラフの最上部に達するとグラデーションの右端から色が採られます。
最後の例図は上記 2 例の組み合わせです。 ブラシサイズパラメーターと色パラメーターの両方をフェード効果に接続し、 それぞれのカーブを「例図 5」と「例図 6」のとおりに設定しました。
動的特性の性格づけは動的特性エディターだけでなくツールオプションダイアログの「動的特性のオプション」での設定とも相互に影響しあって設定されます。 たとえばフェード効果はそちらの動的特性の項で適用しなければ反映されません。
このスライダーがフェード効果の始めから終わりまでの距離を定めます。 効果の実体は動的特性エディターの設定に委ねられています。 たとえば色パラメーターに接続した場合、 描かれる色は[ 反転 が選ばれておらず動的特性エディターの詳細設定のカーブが右肩上がりの単純増加であるとき]現在活性化しているグラデーションの左端の色から始まりだんだんとグラデーションの右へ採られる色が替わり、 [ちょうどフェードの長さまで描線が延びた位置で]グラデーションの右端の色が現れます。
フェードのオプションには 反復 引き出しメニューがあり、 ここでフェードの長さを越えたときに反復するかどうかなどを指定します。
このオプションは描線がフェードのオプションで定めた長さを越したときの姿を定めます。 3 つの選択肢があります。
の場合はグラデーションの終端の色が描線の最後まで続きます。
の場合はグラデーションが始点に戻って繰り返されますが、 色の不連続が起こりやすくなります。
の場合は反転を交え、 終点から始点へ、 始点から終点へと描線が続くまで繰り返されます。
ここで選んだグラデーションが動的特性に色のパラメーターを加えた場合に色を採る基となります。 グラデーションの見本が表示されたボタンをクリックするとグラデーションの簡易一覧表が現れ他のグラデーションに変更できます。
色のオプションで何も選ばなかったときはデフォルトの「描画色から背景色へ」グラデーションからブラシの色が決まります。