3.12. 修復ブラシ

図14.88 ツールボックス上の修復ブラシツールアイコン

ツールボックス上の修復ブラシツールアイコン

このツールについては以前、 修復ブラシツールはまるでステロイド注入でスマートになったクローンツールみたいだと書かれたことがあります。 確かに修復ブラシツールスタンプで描画ツールと近い間柄ながら、 画像の小さな汚れやきずを除去するのにはこちらの方がきびきびとこなします。 写真に写った皺をとりのぞくのはお手のものです。 その違いは、 参照元から修復箇所への単純な画素 (ピクセル) 転写ではなく、 修復箇所の周辺の画素情報までも考慮した転写にあります。 この技術は Todor Georgiev 氏の数学論文 [GEORGIEV01] に示された数式を利用しています。

使用するにあたっては、 まずきずの大きさに合わせてブラシを選びます。 次に Ctrl キーを押しながら再生の元となる領域をクリックします。 Ctrl キーを放してからきずの場所までドラッグしてゆきます。 再度クリックします。 もしきずが浅く周囲からあまり際だったものでなければ、 これで直ちに修復が済みます。 すぐできなくてもクリックを繰り返せば直りますが、 塗り過ぎに注意しましょう。

3.12.1. 呼び出し方

このツールを起用する方法はつぎのいずれかです。

  • 画像ウィンドウのメニューより ツール描画ツール修復ブラシ

  • ツールボックスのツールアイコン

  • キーボードショートカット H

3.12.2. キー修飾 (初期設定)

Ctrl

このキーは参照元を指定するのに使います。 修復にはどの画像のどんなレイヤーからでも、 活性化させてから (レイヤーダイアログで強調表示される)、 Ctrl キーを押しながら画像ウィンドウ上でクリックすれば利用できます。 もし位置合わせをツールオプション上で なし揃える に指定した場合にはクリックした位置が修復転写の参照原点となります。 その位置の画像データが修復ツールの塗りはじめに充てられます。 このキーで参照元を指定する間、 カーソルはトンボ十字の姿に変わります。

Shift

参照元が決まったら、 このキーを押せば直前にクリックした位置と現在のポインターの位置との間を結ぶ細い線が現れます。 Shift キーを押しながら再びクリックするとその線上に沿って修復が行われます。

3.12.3. オプション

図14.89 修復ブラシツールのツールオプション

修復ブラシツールのツールオプション

一般的にはこのツールを起用すると、 そのツールオプションがツールボックスの下に繋げられたウィンドウ上に現れます。 そのようなウィンドウが見あたらないときは、 画像ウィンドウのメニューより ウィンドウドッキング可能なダイアログツールオプション と辿れば今使っているツールのツールオプションウィンドウが開きます。

モード; 不透明度; ブラシ; 動的特性; 動的特性のオプション; 散布; 手ブレ補正; ハードエッジ
描画ツールの全般もしくは大多数に共通するツールオプションについての説明は 描画ツール共通のオプション をご覧ください。
見えている色で

このオプションを有効にすると、 参照元レイヤーに限らずその画像のすべての可視レイヤーに基づいて修復が行われます。

位置合わせ

このオプションは スタンプで描画ツール で説明してあります。

3.12.4. 修復と転写の相違点

修復ブラシツールにはスタンプで描画ツールと共通した機能がありますが、 実行結果はまるで違います。

図14.90 修復転写の比較

修復と転写の比較

赤の区画に 2 つの黒丸。 ズーム 800 倍。 参照位置は 4 色の出あうところ。 転写によるものが左の黒丸。 修復によるものは右の黒丸。