チャンネルダイアログはチャンネルを編集、 加工、 管理する主要なインターフェースです。 チャンネルには二重の使い道があります。 そのためダイアログも2つに区切られています。 上側には色のチャンネルがあり、 下側には選択マスクが置かれます。
カラーチャンネルは、 特定のレイヤーではなく画像に対して適用されます。 原則として自然な色全般を描写するには3原色が必須です。 他のデジタル式ソフトウェアと同じくGIMPも赤・緑・青を3原色にしています。 上段の原色チャンネルが画像の各画素にある 赤、 緑、 青 の値をそれぞれ表現しています。 各チャンネルの左側にチャンネルをグレースケールで図示した縮小見本画像があり、 その原色の 100% 発色が白、 0% 発色が黒で描かれています。 一方で画像に色彩がなくグレースケールモードになっている場合は、 ここには グレー と書かれた原色チャンネルだけがあります。 またインデックス付きカラー画像は一定数の既知の色でできていますから、 これも インデックス と書かれたひとつのチャンネルだけでできています。 このほか任意に追加できるチャンネルとして アルファ値 があります。 このチャンネルは画像の各画素の透過度を描写します。 (用語集の アルファチャンネル もご覧ください。) 一覧表ではチャンネルの左側に透過度を表すグレースケール描写が縮小画像として表示されています。 この白い部分は不透明で画像が見えるところ、 黒い部分は透明で不可視になります。 透過効果なしで作成された画像にはアルファチャンネルがありませんが、 レイヤーダイアログのメニュー などに追加のコマンドがあります。 そのうえレイヤーが1層の画像にレイヤーを追加して複数層にすると、 GIMPは自動的にその 画像に アルファチャンネルを追加します。
注記 | |
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GIMPはCMYK色モデルやYUV色モデルを扱えません。 |
右端の画像を赤・緑・青の3つの色チャンネルと透明度を表すアルファチャンネルに分解した様子です。 右端の画像では透過部分を灰色濃淡による市松模様で表現してあります。 いずれの色チャンネルでも白の部分はすべての色が出ているので白くなっており、 黒の部分は黒くなっています。 赤い帽子は赤チャンネルでは見えても他の色チャンネルでは全く見えません。 このことは仮に真緑や真青であっても同じで、 その色のチャンネルでは見えても他の色チャンネルでは見えなくなります。
「チャンネル」ダイアログはドッキング可能です。 その扱い方については 「ダイアログとその合体」 の節をご覧ください。
呼び出し方はつぎのとおりです。
画像ウィンドウのメニューより
→ →任意のドッキング可能なダイアログのボタンアイコン をクリックすると出てくるタブメニューより
→切り放したウィンドウ のリストが現れます。 この場合には画像メニューより → と進めば「チャンネル」ダイアログを浮かび上がらせられます。
メニューではダイアログがひとつだけの状態で開かれている場合に限り、上段のチャンネルは色チャンネルと任意に追加できるアルファチャンネルからなります。 これらは常に同じ順番に並んでおり、 消去はできません。 選択マスクはこの後で述べますが、 ダイアログ上ではリスト状に並びます。 いずれのチャンネルも一覧表内では縮小見本画像を伴っています。 その縮小画像をマウスの チャンネルの脈絡メニュー が現れます。
でクリックすると一覧表上ではいずれのチャンネルにもその属性が表示されており、 その内容は レイヤーのプロパティ (属性) と非常によく似ています。
最初はすべてのチャンネルが、 つまりはすべての色成分が可視化されています。 どれかのチャンネルを不可視にするにはその左側にある「開いた眼」のアイコンをクリックすればよいのです。 そうすると画像からこのチャンネルに対応する色成分が失われ、 そのチャンネルの段の眼のアイコンが消えます。 その空き地を再びクリックすれば画像にそのチャンネルの色成分が蘇ります。
選択マスクのチャンネル (チャンネル一覧表の下段に置かれる新たなチャンネル) は「鎖」の印のついたアイコンボタンを使って連結ができます。 連結されたチャンネルはそのうちのいずれかひとつが受けた操作を他のチャンネルも同等に受けます。
原色チャンネル (チャンネル一覧表の上段に置かれる既定のチャンネル) もまとめられます。 初期設定ではすべての色チャンネル (およびアルファチャンネル) が選択されており、 一覧表上ではいずれも強調表示がされています。 操作はすべてのチャンネルに対して実行されます。 一覧表のチャンネル項目はクリックすると不活性となります。 レイヤーに 着色 ツールによるような操作を実行すると、 選択された (「連結された」) チャンネルだけがその効果を受けます。 チャンネル項目は再びクリックすれば活性化できます。
小さなプレビュー画像がチャンネルの効果を示しています。 選択マスクの縮小画像はクリックしたまま待つと拡大されます。
同一画像内で複数のチャンネルが同じ名前をもつことはできません。 選択マスクのチャンネル名はダブルクリックすれば編集できます。 基本のチャンネルの名前 (赤、 緑、 青、 アルファ) は変更できません。
注意 | |
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活性化したチャンネルはダイアログでは強調表示 (多くは青) されています。 一覧表上の項目をクリックするとそのチャンネルの活性と不活性が切り替わります。 赤・緑・青の色チャンネルは不活性化すると画像に重大な結果を及ぼします。 例えば青のチャンネルを不活性にすればその間、 画像に塗った色には青の成分が含まれないことになり、 また白の画素は青の補色のイエローになってしまいます。 |
ダイアログをマウスの
でクリックすると出てくるメニューのほかに、 チャンネルの一覧表より下に並ぶボタンで一覧表上のチャンネルに対する基本的な操作ができます。選択マスクにのみ有効です。 チャンネル名 はここで変更できます。 この他に画像ウィンドウ上でのチャンネルの見え方を設定する項目が2つあります。 これらは画像ウィンドウ上でマスクの 塗り不透明度 と色を調節します。 色ボタンをクリックすると「チャンネル表示色の編集」ウィンドウが開かれ、 ここでマスクの表示色を変更できます。
ここで新しいチャンネルが作成できます。 ダイアログが出てきたら チャンネル名 や 塗り不透明度 と、 画像上で選択範囲を表現するマスクの色を設定しましょう。 (アイコンボタンを使うときは Shift ボタンを押しながらクリックすれば直前に使用したオプションを再利用してチャンネルを作成できます。) 新しくできたチャンネルは画像に適用されるチャンネルマスク (選択マスク) になっています。 この節の後半で述べる 選択マスク も参照してください。
選択マスクに対してのみ有効です。 一覧表内でチャンネルを一段上に置きます。 Shift キーを押しながらだと一覧表の最上部に移動します。
一覧表内でチャンネルを一段下げます。 Shift を押しながらだとチャンネルは一覧表の底部に移動します。
これで現在活性化しているチャンネルのコピーが作成できます。 新しく作られたチャンネルの名前は原本の名前に「コピー」の語句を付け加えたものが使われ、 さらに複製をとると番号が振られます。
ヒント | |
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色チャンネルやアルファチャンネルの複製も可能です。 複製は簡単に保管できるうえ、 後で選択範囲として画像操作に使えます。 |
ここでチャンネルを選択範囲に変換できます。 そのままでは作成された選択範囲は既存の選択範囲に置き換わりますが、 修飾キーを使えば既存の選択範囲との合成が可能になります。
選択マスクに対してのみ有効です。 ここで現在活性化しているチャンネルを削除できます。
チャンネルの状況に応じたメニューはチャンネルの縮小見本画像の上をマウスの
でクリックすると出てきます。 このメニューにはダイアログのボタンでできるのと同じチャンネル操作が並んでいます。 唯一の違いは選択範囲への変換操作が個別にメニュー化されていることです。チャンネルプロパティの編集...、 チャンネルを追加...、 チャンネルを上段へ、 チャンネルを下段へ、 チャンネルの複製、 チャンネルの削除: 上述の チャンネルの管理 をご覧ください。
チャンネルを選択範囲に: チャンネルから作成された選択範囲は既存の選択範囲に置き換わります。
選択範囲に加える: チャンネルから作成された選択範囲は既存の選択範囲に追加されます。 選択範囲は最終的に両者の合成となります。
選択範囲から引く: チャンネルから作成された選択範囲は既存の選択範囲を削り取ります。
選択範囲との交わり: チャンネルから作成された選択範囲と既存の選択範囲の重なった部分が新たな選択範囲になります。 両者の共通部分が残されます。
チャンネルは選択範囲を保存して再利用するのにも使えます。 画像ウィンドウの クイックマスク ボタンをクリックすると自動的に クイックマスク と名付けられたチャンネルが作成され、 画面上に見えていた選択範囲がチャンネルダイアログの一覧表で縮小見本画像になって保存されます。 ここでは白い部分が選択されており黒い部分は選択範囲外を示しています。 GIMPには矩形選択ツールやファジー選択ツールをはじめたくさんの選択ツールがありますが、 選択マスクは選択範囲をそういった描画方法で灰色濃淡のチャンネルに変換するしくみです。 ですから灰色の画素は不完全選択です。 選択範囲の境界線をぼかしたとき選択されたところとされていないところの区切りがなだらかになる様子になぞらえてもよいでしょう。 選択範囲を塗りつぶしたり画像上の物体を背景から孤立させて消去するときに醜いモザイク処理効果に陥るのを避けるためにも、 このことが重要です。
選択マスクを初期化するにはつぎのような方法があります。
活性化させた選択範囲があるなら、 画像ウィンドウのメニューから
→ を実行します。画像ウィンドウの左下にあるボタンで クイックマスク を作成します。 その内容は活性化していた選択範囲をもとに初期化されます。
チャンネルダイアログ上で、 ボタンをクリックするか脈絡メニューから と進みます。 作成された選択マスクは「選択マスク コピー」と名付けられて (さらに作成されるチャンネルには番号が振られて) チャンネルダイアログに現れます。 名前の変更はチャンネルの項目上をマウスで クリックすると出てくる脈絡メニューの最初の項目を実行するか、 チャンネルの名前をダブルクリックすればできます。
チャンネルは初期化もしくは選択 (一覧表で強調表示) あるいは可視化 (ダイアログの目のアイコン) または表示を任意に (色と不透明度の属性) したあとは、 あらゆる描画ツールで加工を始められます。 特に使う色は重要です。 白や灰色や黒以外の色を用いて塗った場合には、 その色の明度がマスクの陰影 (中間調や明暗の灰色) を定めるのに使われます。 マスクの描画ができたら、 ボタンをクリックするか、 脈絡メニューの を実行すればそれを選択範囲に変換できます。
選択マスクの加工に使えるのは描画ツールだけではありません。 例えば一様にグラデーションやパターンで塗りつぶす領域を選択ツールで区切られます。 一覧表に選択マスクをたくさん並べ、 それらを組み合わせれば容易に複雑な選択範囲が描けます。 選択マスクの選択範囲に対する関係を画像に対するレイヤーになぞらえて言う人もいます。
注意 | |
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選択マスクを活性化している間は、 画像でなくマスクを加工していることにご注意ください。 画像上で作業するには選択マスクをすべて不活性にする必要があります。 それから目のアイコンを消してマスクの表示を止めるのを忘れないでください。 もちろんRGBの各色チャンネルすべてを (もしあればアルファチャンネルも) 活性化して画像を表示させましょう。 |
「クイックマスク」とは一時的に選択範囲を描画可能にする目的をもつ 選択マスク だと言えます。 一時的と断わったのは、 通常の選択マスクとは異なり選択範囲に戻すとチャンネルの一覧表から消えるからです。 漸進変化を含む複雑な選択範囲を描こうとすると、 選択ツール はしばしばその限界を見せてしまいます。 こんなとき、 クイックマスクを使ってみると非常に良好な仕上がりが期待できるでしょう。
クイックマスクを起用する方法はつぎのいずれかです。
画像ウィンドウのメニューより
→スクリーンショットでも見えている画像ウィンドウの左下にある小さな正方形のボタンをクリック
キーボードショートカット Shift+Q
「クイックマスク」を使うにはまず画像ウィンドウの左下のボタンをクリックしてください。 画像上に何か選択範囲があれば、 その境界線が半透明な赤で覆われて選択範囲の内容が変更を受けることなく表示されます。 選択範囲が何も無かったときは画像全体が半透明な赤で覆われます。 この左下のボタンをまたクリックするとクイックマスクは解除されます。
チャンネルダイアログ上ではクイックマスクの縮小見本画像か名前をダブルクリックすれば「チャンネルプロパティの編集」ダイアログが開かれますので、 ここでクイックマスクの 塗り不透明度 や塗りつぶし色を変更できます。 いつ何時でも一覧表の クイックマスク の欄の「目」のアイコン をクリックすればマスクを隠せます。
マスクは灰色濃淡の階調で構成されているので、 マスクで塞がれた領域を減らすには白か灰色を、 増やすには黒を使わなくてはなりません。 濃淡のついた灰色で塗られている領域は選択範囲のぼかされた境界付近のような漸進変化をしています。 マスクができあがったら画像ウィンドウの左下のボタンを再びクリックすればチャンネルの一覧表からクイックマスクが消え、 その内容は選択範囲に変換されます。
クイックマスクの使用目的は選択マスクの管理に煩わされることなく選択範囲を描画ツールで描くこと、 しかも必要なら選択になだらかな強弱を加えることです。 このような手法は画像内にある物体を孤立させて取り出すのに使うと、 選択範囲はもうできあがっているのであとはその範囲内の画像を (もし欲しい物体が範囲内にあるときは反転してから) 削除すればよいだけになりますから便利です。
説明
クイックマスクを有効にした画像ウィンドウのスクリーンショット。 クイックマスクが有効な間はすべての操作をクイックマスクが受ける。 マスクに対しグラデーションを黒 (左) から白 (右) にかけた。
クイックマスクを解除した。 選択範囲の枠 (蟻の行進) が画像の右半分だけにあるのは、 選択範囲の境界線がグラデーションの中央にあるからである。
選択範囲が活性化したままで描線を加えた。 不思議なことが起こった。 もう見えなくなったはずのグラデーションが、 選択範囲の枠内・枠外を問わず画像の全域にわたっていまだに残っている。
クイックマスクボタンをクリックすると発行されるコマンドが8ビット (0-255) チャンネルを一時的に作成するので、 ここに漸進的変化のある選択範囲も収められます。 あらかじめ選択範囲ができていた場合はクイックマスクは選択範囲の内容をもとに初期化されます。 クイックマスクが起用されると画像は赤い半透明な薄膜で覆われます。 これは非選択画素を表しています。 クイックマスクを通して選択範囲を作成するときは 描画ツール がどれでも使えます。 チャンネルの属性を強化するにあたり、 利用できる色は白黒と灰色濃淡に限られます。 白い領域があとで選択範囲になります。 選択範囲の境界線は再びクイックマスクの切り替えをすれば直ちに表示されますが、 一時的なチャンネルはもうその時点から利用できなくなります。
ヒント | |
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クイックマスクで作成した選択範囲をチャンネルに保存するには、 画像ウィンドウのメニューより → してください。 |