2. 画像構造に関連するダイアログ

ここで述べるダイアログは レイヤーチャンネルパス のような画像の構造を制御したり操作するためのものです。

2.1. レイヤーダイアログ

図14.1 レイヤーダイアログ

レイヤーダイアログ

レイヤーダイアログはレイヤーの編集、 変更、 管理を行うための主要なインタフェースです。 レイヤーとはスライド[画像]の重なりだとか身に付けた衣服のようなものととらえてよろしい。 レイヤーを使えば、 画像が概念上の分割をして構築できるうえ、 それぞれ個別に他の部分へ影響しない作業が可能になります。 レイヤーは上へ上へと積み重なりあっています。 最背面のレイヤーは画像の背景をなし、 画像の前景の各部分はその上に置かれます。

図14.2 レイヤー数層からなる画像

レイヤー数層からなる画像

画像の各レイヤー

レイヤー数層からなる画像

結果の画像


2.1.1. ダイアログの呼び出し方

レイヤーダイアログはドッキング可能です。 その扱い方については 「ダイアログとその合体」 の節をご覧ください。

呼び出し方はつぎのとおりです。

  • 画像ウィンドウのメニューより ウィンドウドッキング可能なダイアログレイヤー

  • 任意のドッキング可能なダイアログのアイコンボタン をクリックすると出てくるタブメニューより タブを追加レイヤー

  • キーボードショートカット (初期設定) Ctrl+L

ウィンドウ メニューではダイアログがひとつだけの状態で開かれている場合に限り、 切り放したウィンドウ のリストが現れます。 この場合には画像メニューより ウィンドウレイヤー と進めばレイヤーダイアログを浮かび上がらせられます。

2.1.2. レイヤーダイアログの利用法

概観

ダイアログ上にはすべてのレイヤーの縮小見本画像が表示されています。 画像の成分が複数のレイヤーに分散している様子はその一覧表示で分かります。 リストの一番上のレイヤーは最初に見えるもの、 そして一番下つまり背景のレイヤーが最後に見えるものです。 一覧表より上の区画には個々のレイヤーを特徴づけるしくみがあります。 一覧表より下の区画にはリストを管理するためのボタンがあります。 レイヤーの見本画像上を 第2ボタン でクリックすると メニュー が開かれます。

レイヤーのプロパティ (属性)

一覧表上ではいずれのレイヤーにもその属性が表示されています。

レイヤーの可視度

縮小見本画像の左側に目のアイコンがあります。 その目をクリックすればレイヤーが見えるか見えないかを切り替えられます。 (Shift キーを押しながらクリックすればそのレイヤー 以外の すべてのレイヤーを一時的に隠せます。)

レイヤーの連結

鎖の姿をしたもうひとつのアイコンは、 同時に一つ以上のレイヤーを操作するとき、 例えば移動ツールで同様に複数の描画対象を移動するためにレイヤーをまとめるときに使います。

レイヤー名

主な属性としてレイヤー名があります。 名前を編集するにはレイヤーの縮小見本画像かレイヤー名をダブルクリックしてください。 Enter キーを押すか他のレイヤーの欄をクリックすれば編集が終わります。

[注記] 注記

アニメーション用レイヤー (GIFMNG) の場合にはレイヤー名がある種のパラメータを示すのに使われます。 その形式は レイヤー名 (フレーム間の時間ms) (結合モード)、 例えば フレーム1 (100ms) (replace) となります。 フレーム間の時間はアニメーションのコマとなるレイヤーの各持ち時間をミリ秒単位で設定しています。 結合モードはコマを切り替えるとき直前のレイヤーと結合させる方法 (combine) をとるか置き換える方法 (replace) をとるかを定めます。

レイヤーの特徴

レイヤーの一覧表より上に現在活性化しているレイヤーの属性のいくつかを指定する項目があります。 活性化レイヤーは下図で青く強調表示されています。 モード透明保護不透明度 の3つの属性があります。

モード

レイヤーのモードはこのレイヤーが他のレイヤーとどのように相互作用するかを定めるものです。 引き出しメニューよりGIMPで利用できるすべてのモードを選んで呼び出せます。 「レイヤーのモード」 でレイヤーのモードを逐一解説しています。

透明保護

このオプションにチェックを入れるとレイヤーの透過部分が保護されます。 塗りつぶしツールではたとえ 透明領域を塗りつぶす オプションを有効にしたとしても着色できません。

図14.3 透明保護の実行例

透明保護の実行例

活性レイヤーには3本の水平な不透明の緑色の縞がひかれ、 その背景は透明である。 透明保護 にチェックは入っていない。 不透明部分と透過部分を問わず活性レイヤーにひかれた赤のすじは連続している。

透明保護の実行例

透明保護 にチェックを入れてから活性レイヤーに赤のすじをひいた。 不透明部分のみ赤く塗られている。 透過部分は存続している。


[ヒント] ヒント

レイヤーダイアログでレイヤー名が太字表示されているレイヤーにはアルファチャンネルがありません。

不透明度

このスライダを動かせばレイヤーの不透明度を増減できます。 不透明度が 0 のときレイヤーは透明で全く見えません。 こことレイヤーマスクとを混同しないようにしましょう。 レイヤーマスクは画素ごとに透明度を設定するものです。

レイヤーの管理

レイヤーの一覧表より下の一連のボタンでレイヤーの一覧表に対する基本的な操作がいくつか行なえます。

レイヤーを追加...

このアイコンボタンで新規レイヤーが作成できます。 ダイアログが現れましたら レイヤー名 を記入してください。 キャンバスサイズと異なる大きさにする場合には 高さ を変更することになります。 レイヤーの背景の状態は レイヤー塗りつぶし方法 で選択してください。

レイヤーを一段上に移動

一覧表内でこのレイヤーを一段上に (前面側に) 移動します。 Shift キーを押しながらだと一気に最前面に移動します。

レイヤーを一段下に移動

一覧表内でこのレイヤーを一段下に (背面側に) 移動します。 Shift キーを押しながらだと一気に最背面に移動します。

[ヒント] ヒント

一覧表の底 (最背面) のレイヤーを上に移動するとき、 これが背景レイヤーとなっている場合にはまっさきに透過効果のチャンネル (アルファチャンネルともいう) をそのレイヤーに追加してやる必要があるかもしれません。 その方法は、 背景レイヤーを選択して強調表示させ 第2ボタン クリックすると出てくるメニューの、 アルファチャンネルを追加 を実行です。

レイヤーを複製

現在活性化しているレイヤーの写しを作成できます。 新しいレイヤーの名前はその後ろにコピーの語句が添加されます。 さらに複製をとると次の新しいレイヤーの名前にはコピー #数字のように番号が1から振られます。

レイヤーを固定

活性レイヤーが一時的なレイヤー (フローティング選択範囲とも呼ばれ、 このようなアイコン で表される) になっているときは、 このボタンをクリックすればそのレイヤーを直前に活性化していたレイヤーに固定[統合]できます。

レイヤーを削除

このアイコンボタンをクリックすれば活性レイヤーを削除できます。

まだまだあるレイヤーの機能

レイヤーの大きさ についての他の機能は、 レイヤーダイアログ上をマウスの 第2ボタン でクリックすると出てくる レイヤーダイアログのメニュー に入っています。 また画像ウィンドウメニューより レイヤー と辿ったサブメニューにもあります。

レイヤーの統合 についての機能は 画像メニュー にもあります。

レイヤーをクリックしてドラッグすると

レイヤーの縮小見本をクリックしたままで待つと、 見本画像が大きくなりマウスでドラッグして移動できるようになります。

  • 一覧表内の他の段 で放つと移動します。

  • ツールボックスまでドラッグして放つ と、 そのレイヤーの複製だけを含んだ新しい画像が作成されます。

  • 他の画像ウィンドウ上までドラッグして放つ と、 その画像の既存のレイヤーの上段にこのレイヤーの複製が加わります。

2.1.3. レイヤーマスク

図14.4 レイヤーマスク追加ダイアログ

「レイヤーマスク追加」ダイアログ

概観

レイヤーには各層ごとにレイヤーマスクと呼ばれる透過効果マスクが加えられます。 レイヤーマスクはレイヤーと同じ大きさがあり、 属するレイヤーの各画素に対応する同数の画素をもっています。 つまりマスクの各画素はレイヤーと同位置の画素と対をなしています。 マスクは 0 から 255 の値をもつ陰影画素の集合です。 値が 0 の画素は黒くなり対応するレイヤーの画素を完全透過にします。 値が 255 の画素は白になり、 対応するレイヤーの画素を完全不透明にします。

レイヤーマスクを加えるにはまずそのレイヤーをマウスの 第2ボタン でクリックすると出てくる脈絡メニューで レイヤーマスクの追加... を選んでください。 するとダイアログが開かれ、 つぎのようなマスクの内容で初期化できます。

  • 完全不透明(白): ダイアログ上ではマスクは白くなります。 マスクを白く塗るとレイヤーの画素が完全に可視化することから、 この場合、 画像ウィンドウのすべての画素が見えます。 黒でマスクを塗るとレイヤーのその位置は透明になります。

  • 完全透明(黒): ダイアログ上ではマスクは黒くなります。 マスクを黒く塗るとレイヤーの画素が透明になりますから、 この場合レイヤーは完全透過です。 白でマスクを塗るとマスクは剥がれ、 レイヤーの画素が見えるようになります。

  • レイヤーのアルファチャンネル: マスクはレイヤーのアルファチャンネルの内容どおりに初期化されます。 既にレイヤーに透過効果があればそれがマスクに複写されますが、 もしなければ完全透明(黒)と同じように初期化されます。

  • レイヤーのアルファチャンネルを移転: マスクの初期化は前のオプションと同じですが、 レイヤーのアルファチャンネルが全面的に完全不透明に戻されます。

  • 選択範囲: マスクは各画素の選択の値をもとに初期化されます。

  • レイヤーのグレースケールのコピー: マスクはレイヤーの画素の値をもとに初期化されます。

  • チャンネル: 選択マスク を作成しチャンネルダイアログに保管してあれば、 それをレイヤーマスクの初期化に利用できます。

  • マスク反転: このチェックボックスで白黒が反転します。

マスクを作成すると、 その縮小画像がレイヤーの縮小画像の右隣に現れます。 レイヤーとレイヤーマスクはその縮小見本画像のどちらか一方をクリックすればそれが描画対象になります。 活性化された方に白の枠線 (マスクが白くなっていると見えづらい) がつきます。 これが肝心な点で、 キャンバスを見たところで描画対象がレイヤーなのかマスクなのかは一切分かりませんので、 マスクを扱う際には常にレイヤーダイアログが見えるようにしておきましょう。

Alt キーを押しながら (システムによっては Ctrl+Alt の組み合わせを押しながら) レイヤーダイアログ上のレイヤーマスクの縮小見本画像をクリックすると、 レイヤーマスクを表示 のコマンドがはたらき、 マスク縮小見本の枠線が緑色に変わります。 代わりに Ctrl キーを押しながらのクリックだと レイヤーマスクを無効化 のコマンドがはたらき、 枠線は赤色に変わります。 通常表示に戻すには直前のコマンドを再度実行してください。 これらのオプションは作業を容易にするためにあります。

レイヤーマスクの例

図14.5 レイヤーマスク付きのレイヤー

レイヤーマスク付きのレイヤー

画像には花が写っている背景レイヤーと、 その上に完全不透明な青いレイヤーがある。 白いレイヤーマスクが青のレイヤーに加えられた。 白いマスクはレイヤーの画素を完全可視化するので、 画像ウィンドウでは依然として青いレイヤーが見えている。


図14.6 レイヤーマスクに描くと

レイヤーマスクに描くと

レイヤーマスクを活性化した。 黒で描くとレイヤーが透過する。 背後のレイヤーが見えるようになる。