「ずらしマップ」を用いて画素ごとにずらし方を調節できます。 このフィルターは描画対象 (活性レイヤーや選択範囲) の画素を、 同じ位置のずらしマップの画素の濃さに X ずらし や Y ずらし の値を乗算した値に基づいて X 方向と Y 方向にそれぞれ移動させます。 X 方向と Y 方向のいずれのずらしマップも適用を受ける描画対象と同じ寸法でなければなりません。 [このフィルターはずらしマップに選ばれた画像を内部的にグレースケール画像に変換して利用しています。] 面白い変形効果を引き出せるフィルターです。
フィルターは画像に対応するプレビュー オプションを有効にしておれば画像に実際にフィルターをかける前からダイアログ上で調節したとおりに即座に効果のようすが見て判るようになっています。 お使いのコンピューターが処理に時間を多く費すときはプレビューにチェックを入れっぱなしにしないのがコツです。
このフィルターの操作は、 水平方向 X と垂直方向 Y に分けて画素をずらす 直交座標 モードと、 角度と正接方向に分けて画素をずらし回転やひねりを加える 極座標 モードのどちらかを選べます。
いずれのオプションについても詳しくはこの下の節をご覧ください。
このオプションは活性レイヤーもしくはその選択範囲の境界線付近の画素をずらした跡地をどのように扱うかが指定できます。
この選択肢はずらされてはみ出した画素を反対側の縁で利用します。
この選択肢は画素が去って空になった領域を付近の画素の色の延伸で補います。
この選択肢は画素が去って空になった領域を黒く塗りつぶします。
どちらのモードもずらし方向やずらし距離はずらしマップの同じ位置の画素の濃さによって決まります。
マップ用画像は 256 階調の灰色濃淡 (0-255) グレースケール画像に変換されてから利用され、 階調の (理論的な) 平均値は 127.5 となるはずです。 フィルターは画像上でどの画素もそれと同じ位置のマップ画素が 127.5 より小さい (0-127) 値の場合に所定の方向へ、 逆に同じ位置のマップ画素が 128 から 255 までの間の値ならばその反対側の方向へずらされます。
これらのオプションは水平方向 (X) と垂直方向 (Y) のずらしを可能にし、 マップの画素の値が 0 か 127 までなら右方向や下方向に、 128 から 255 までなら左方向や上方向に画像の画素を移動させます。
記入した X ずらし 係数や Y ずらし 係数はそのまま移動距離を示しているのではありません。 移動距離を求める計算式 で係数として使われます。 この式の「強度
」とはマップ上の画素の比例濃度です。 [27] この計算式に強度が関わることが大事な点です。 これがあるおかげで、 徐々に拡がるずれをグラデーションを使ったマップで表現できるのです。 [強度の値は -1.00 から 1.00 までの範囲で変化しますので、 係数はずれの距離 (ピクセル単位) の最大値ということになります。]
この係数の値は正にも負にも設定できます。 負のずれは正と方向が逆になります。 ずれ係数 X の値の範囲は画像の幅のマイナス 2 倍からプラス 2 倍まで、 ずれ係数 Y の値の範囲は画像の高さのマイナス 2 倍からプラス 2 倍までです。
引き出しリストにはずらしマップに使えるレイヤーが並んでおり、 そこからひとつを選びます。 レイヤーがここに現れるにはつぎの条件があります。 まずひとつめは、 このフィルターを呼び出した時点でそのレイヤーを含む画像が開かれていなければなりません。 さらにふたつめは、 ずらしの対象となる画像もしくはその選択範囲と同じ寸法でなければなりません。 これを作るためにずらしの対象となる画像もしくはレイヤーの複製をとってグレースケール化し、 グラデーションなどをかけつつ適当に加工してマップにする方法がよく行なわれています。 マップ画像には RGB 画像も使えますが、 明度だけ利用されるため色があるとかえって結果が見通しづらくなってしまいます。 マップには水平方向と垂直方向にそれぞれ異なる画像を指定できます。
このオプションを有効にすると、 対象画像では画素はレイヤーもしくはその選択範囲の中心までの距離が変化します。 レイヤーの画素はそれぞれ同じ位置のマップ上の画素の値が 0 から 127 までの値ならば中心から離れてゆき、 逆にその画素と同じ位置のマップ上の画素の値が 128 から 255 までの値ならば対象レイヤーの画素は中心に近づきます。
ここで設定した値とずらしマップとの関係は前述の「X ずらし, Y ずらし」を参考にしてください。
ずらしの規模は極点からの距離には関係なく、 どの画素も同程度の移動をします。 つまり画像は伸び縮みをせず歪んでしまうこともあります。
上図は 160×120 ピクセルの画像を、 ひねりオプションに真っ白なずらしマップと係数 20.0 を設定した例です。 フィルターを適用したところ中央に向かって 20 ピクセルのずれとなりました。 しかしこのずれは水平方向では 25%、 水平方向では 33%、 対角線方向では 20% とまちまちなため画像にひずみが生まれます。
このオプションを有効にするとレイヤーもしくはその選択範囲の画素のレイヤー中央からの方角が、 その同じ位置のマップ上の画素の値の大きさに従ってずれます。 平坦な濃度のずらしマップなら画像が丸ごと回転しますが、 マップに多様な濃度があれば画像は渦を巻きます。
対象画像のある画素はその同じ位置のずらしマップの濃度が 0 から 127 までの値の場合は反時計回りに回転し、 位置の同じずらしマップの画素の濃度が 128 から 255 までの値ならば時計回りに回転します。
係数とずらしマップについては上記をご覧ください。
注記 | |
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中間濃度以外の平坦なマップを用いて「極座標」ずらしモードでこのフィルターを適用すると結果的に 渦巻きと吸い込み 変形フィルターと同じような効果が得られます。 |
つぎの手順を踏んでください。
加工したい画像をまず開いてください。
その画像もしくはレイヤーの複製を作ります。 複製側を活性化して (画像ウィンドウのメニューより ずらしマップ となります。
→ → で) グレースケール化します。 そこにお好みのグラデーションをつけます。 これが対象画像と寸法が同じ対象画像もしくはレイヤーを活性化します。 そこに何かテキストを貼って テキストレイヤー として加えます。 そのレイヤーを画像と同じ大きさにします。 やり方は、 画像ウィンドウのメニューの メニューからもしくはレイヤーダイアログの脈絡メニューを呼び出して コマンドを実行します。 ちなみにテキストレイヤーは文字と透明な背景でできており、 フィルターは完全透過ピクセルを移動しないため文字の画素だけがずらせます。
テキストレイヤーを活性化させます。 ずらしマップフィルターを呼び出し、 プレビュー画面を参考にしながらパラメーター、 とりわけ係数の調節を行います。
ボタンをクリックして実行です。この方法はテキストレイヤーに限らずどんなレイヤーにも適用できます。
ティップ | |
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グラデーションを望みどおりに描くには先に黒から白へのグラデーションを描いておき、 トーンカーブツール を使ってグラデーション曲線を描くとよいでしょう。 |
この節ではずれの規模の算出について詳しく知りたい方を対象にそのしくみについて解説しています。 ご興味のない方は無視してくださっても問題ありません。
つぎの概観例では X のずれ係数を 30.0 とした結果、 ずらしマップの灰色濃淡に従い右に 19 ピクセルか 8 ピクセル、 左に 4 ピクセルか 15 ピクセル画素が移動した様子を示しています。
移動距離はどのように算出されるのでしょう。 これは意外と簡単です。
どの等式も得られた値が例で見て知っている結果とまったく同じにはなっていません。 (整数以外の値も使っていますが大したことではありません。) それではここで得られた値は整数値に近似されて画素はきりのいい数だけ移動するということなのでしょうか。 答えはいいえです。 どの画素も小数点以下を含め計算どおりに移動されます。 「分数的なずらし」は補間を使って実施されます。 つぎの近影はその様子を表しています。
単色の領域をずらすとその境界線付近で細い (1 ピクセル幅の) 中間色領域ができます。 上の拡大図では黒い領域は -4.12 ピクセル移動したため中間色は黒が 12% と金が 88% の配分になります。
たとえばもし X ずらし係数を 30.00 ではなく 30.01 と設定したとしたら、 得られる結果は異なるはずですが、 もちろんその違いを見分けるのは難しいでしょう。