3.3. 塗りつぶし

図13.51 ツールボックス上の塗りつぶしツールアイコン

ツールボックス上の「塗りつぶし」ツールアイコン

このツールは選択範囲を現行の描画色で塗りつぶします。 Ctrl キーを押しながらだと背景色が使われます。 ツールオプションの指定に拠り、 選択範囲の全体を塗りつぶす場合と、 クリックされた位置と同じ色の部分だけが塗られる場合があります。 ツールオプションは透明度の扱い方に係わるものもあります。

塗られる部分の大きさはオプションで定める しきい値 に左右されます。 しきい値は塗る広さにも関わります。 (ファジー選択 でのしくみと同じです。) クリックした始点から塗りつぶしがはじまり、 画素 (ピクセル) の色またはアルファ値に大差が無い限り先へと広がります。

透明なレイヤーに描かれた形象 (例えばテキストレイヤー上の文字) をそれまでとは違う色で塗り直したとき、 形象の縁だけ以前の色が残っている場合があります。 これはしきい値 (塗りつぶしツールのオプションダイアログにある) が低かったことによるものです。 しきい値が低いと塗りつぶしツールは半透明の画素を着色しないので、 以前の色が残ってしまい目立ってしまったのです。

完全透明な領域で塗りつぶしをするときは、 透明保護オプション (レイヤーダイアログにある) がロックされていないことを確かめてからにしましょう。 このオプションが有効だと半透明及び不透明な領域だけが塗られます。

3.3.1. 呼び出し方

  • 塗りつぶしツールを起用する方法はつぎのいずれかです。

  • ツールボックスのツールアイコン

  • キーボードショートカット Shift+B

3.3.2. キー修飾 (初期設定)

  • Ctrl キーは、 単色塗りつぶしに用いる色を描画色から背景色に切り替えます。

  • Shift キーは塗る対象領域を、 類似色領域から選択範囲に切り替えます。

3.3.3. オプション

図13.52 塗りつぶしツールのツールオプション

「塗りつぶし」ツールのツールオプション

一般的にはこのツールを起用すると、 そのツールオプションがツールボックスの下に繋げられたウィンドウ上に現れます。 そのようなウィンドウが見あたらないときは、 画像ウィンドウのメニューより ウィンドウドッキング可能なダイアログツールオプション と辿れば今使っているツールのツールオプションウィンドウが開きます。

モード; 不透明度

描画ツールに共通して使えるオプションについては 描画ツール をお読みください。 ここでは塗りつぶしツールに特有のオプションについてのみ取り上げます。

塗りつぶし方法

GIMPは塗りつぶしに3つの方法を提供しています。

描画色塗り

現在指定されている描画色を塗りつぶしの色とします。

背景色塗り

現在指定されている背景色を塗りつぶしの色とします。

パターン塗り

現在指定されているパターン (文様) を用いて塗りつぶします。 引き出し排列から使いたい文様を選択できます。

この引き出し排列で数多ある文様から次回の塗りつぶしに用いる文様をひとつ選び出します。 排列選択枠の底部にある左寄り4つのボタンを使って見本の並べかたや大きさを調節できます。

塗りつぶし範囲
選択範囲を塗りつぶす

このオプションは既に用意してある選択範囲か画像全体を塗りつぶすときのものです。

類似色領域を塗りつぶす

既定はこちらです。 クリックした場所の画素の色に類似した色のある隣接領域が塗りつぶされます。 色の類似性は明度のしきい値で定められ、 しきい値は実値もしくはカーソルの位置で設定できます。

類似色の識別

この区画では2つのオプションがあります。

透明領域を塗りつぶす

透明領域を塗りつぶす オプションで不透明度の低い領域も塗りつぶせます。

レイヤー結合色

レイヤー結合色 オプションは色抽出の対象を単レイヤーからすべてのレイヤーに切り替えます。 この合成色抽出が可能になると、 しきい値と比較される色情報をとるレイヤーからみて下 (背面側) のレイヤーであっても塗りつぶしができます。 その条件は、 最前面以外のレイヤーを選んだうえで、 前面側のレイヤーが視覚的に色を評価できるものであることだけです。

しきい値

しきい値スライダは塗りつぶし範囲の輪郭をとるための色評価の水準を定めます。 彩り豊かな画像で高い値を設定すると塗られる範囲が広くなり、 反対に低い値を設定すれば範囲は小さくなります。

塗りつぶし手段

このオプションでGIMPが類似色を算出し塗りつぶし範囲の境界を定めるために画像のどの成分を根拠とするかを指定します。

根拠となる成分を コンポジット色相彩度明度 からひとつ選びます。

このオプションを理解することは簡単ではありません。 試しに赤チャンネルを選択したとします。 どこかの画素をクリックすれば、 その画素の 赤チャンネル の値からしきい値を越えない範囲で近い値を、 このツールは隣接する画素を辿って探し出します。 さらに例を挙げましょう。

元の画像: 三原色すなわち赤(255,0,0)、 緑(0,255,0)、 青(0,0,255) それぞれの帯にグラデーションをかけたもの。 これからこの画像をしきい値が 15 の設定でマゼンタ色で塗りつぶします。

画像その1: 塗りつぶし手段 = コンポジット。 3色の帯をつぎつぎとクリックしました。 どの帯もしきい値の許す範囲で塗りつぶされています。

画像その2: 塗りつぶし手段 = 。 赤の帯をクリックしました。 塗りつぶしツールはクリックした点の赤チャンネル上の値をとり、 そこに隣接する画素から順にしきい値の許す範囲で赤チャンネル上に近似値をもつ領域を探して辿ります。 この基準に見合う領域は狭いものです。 緑と青の帯上の画素の赤チャンネルの値はいずれも 0 なので、 赤チャンネル上ではクリックされた画素の値とはまったく異なります。 したがってマゼンタ色はこちらには拡がりません。

画像その3: 塗りつぶし手段 = 。 緑の帯をクリックしました。 すると赤チャンネル上のクリックされた画素の値は0ですが、 緑と青の帯上のすべての画素も赤チャンネルでの値は 0 ですから、 両者とも塗りつぶされました。

図13.53 塗りつぶし手段の例

「塗りつぶし手段」の例

元画像

「塗りつぶし手段」の例

画像その1

「塗りつぶし手段」の例

画像その2

「塗りつぶし手段」の例

画像その3


3.3.4. 境界のぼけた選択範囲の塗りつぶし

境界をぼかして作成された選択範囲を繰り返しクリックすると、 塗りつぶされる範囲は徐々に拡がってゆきます。

図13.54 境界のぼけた選択範囲の塗りつぶし

境界のぼけた選択範囲の塗りつぶし

元画像

境界のぼけた選択範囲の塗りつぶし

塗りつぶしツールでさらに3回クリックした後の図