5.8. ディスプレイフィルター...

ディスプレイフィルター... コマンドはダイアログウィンドウを開きます。 このウィンドウでディスプレイフィルターとそのオプションの管理ができます。 ちなみにディスプレイフィルターは フィルター メニュー内のフィルターとは無関係です。 ディスプレイフィルターは画像の表示処理にのみ影響を及ぼし、 画像を加工することはありません。 ディスプレイフィルターは喩えるならコンピューター画面の前に掛けた大きな仕切りガラスです。 ソフトプルーフ (色校正) を経た印刷や色管理の調整に使うのはもちろん、 色覚障碍や特殊な発色環境を想定した色づけにも便利に使えます。

5.8.1. コマンドの呼び出し方

画像ウィンドウのメニューより 表示ディスプレイフィルター...

5.8.2. カラーディスプレイフィルターダイアログのご説明

図16.43 カラーディスプレイフィルターの設定ダイアログ

カラーディスプレイフィルターの設定ダイアログ

このダイアログには 2 つの小さな選択ボックスがあります。 左の選択ボックスは 利用可能なフィルター が一覧表で表示されています。 ここでフィルターの項目をクリックしてから右矢印をクリックすれば右側の選択ボックスに加えられます。 右の アクティブなフィルター 一覧表に加わったフィルター項目にはそれぞれチェックボックスが付いていて、 これが有効になると表示処理に適用されます。 右の選択ボックスで選択され強調表示されたフィルター項目は左矢印をクリックすれば撤去できます。 フィルター項目はクリックすると両ボックスより下側にその名前やオプションが表示されます。

5.8.3. 色覚障害の視覚

作成した画像はできればたくさんの人々がさまざまなシステム上で見られることになるはずですしそうなってほしいと我々は願っています。 ところがお使いのコンピューター画面上では素晴らしい出来に見えた画像が、 色覚に障碍のある方や何か異なる設定の画面で見ている方には多少異なる印象を与える可能性があります。 場合によっては画像の一部の情報が見えないかもしれません。

図16.44 色覚障害の視覚ダイアログのご説明

色覚障害の視覚ダイアログのご説明

5.8.3.1. オプション
色覚障害のタイプ

この引き出しメニューで以下に示す 3 つの障碍からひとつを選びます。

第一色覚障害[19] (赤に無感覚)

第一色覚障害は赤色に対する色覚が弱いか失われています。 よく知られた紅緑色神異常という色覚異常です。 紅緑色神異常の人口は比較的多数あります。

実際のところ第一色覚障害はそれよりも複雑なものです。 この障碍を持つ人はイエローと青の区別はできますが緑と赤が見分けられません。 加えて輝度に対する視覚が弱く、 色相は波長の短い方に遷移しています。

第二色覚障害 (緑に無感覚)

第二色覚障害は緑色に対する色覚が弱いか失われています。 赤と緑に対する知覚が比較的劣るところは第一色覚障害とまるで変わりありませんが、 輝度視覚の劣化はなく色相の遷移もありません。

第三色覚障害 (青に無感覚)

第三色覚障害は緑や赤の知覚はありますが青やイエローの識別に困難があります。 輝度に対する視覚が一部失われており、 色相は波長の長い方に遷移しています。

5.8.3.2. 例

図16.45 第一色覚異常の例

第一色覚異常の例

元の画像

第一色覚異常の例

赤に対する色覚障碍者は黒地 (0,0,0) に赤い (255,0,0) テキストが見えない。


図16.46 色覚障碍により同じ画像に 3 種類の見え方があることの例

色覚障碍により同じ画像に 3 種類の見え方があることの例

標準的な色覚

色覚障碍により同じ画像に 3 種類の見え方があることの例

第一色覚異常

色覚障碍により同じ画像に 3 種類の見え方があることの例

第二色覚異常。 イエローが赤にまで及ぶ。

色覚障碍により同じ画像に 3 種類の見え方があることの例

第三色覚異常。 緑は僅かに青の帯域にかぶる。


5.8.4. ガンマ値

図16.47 ガンマ値ダイアログ

ガンマ値ダイアログ


電子的出力強度と色の明るさは必ずしも一致しません。 これはデバイス (カメラ、 スキャナー、 モニターなどの装置) に依存した関係であるためです。 ガンマ値はその一致をはかるために使われる係数です。 モニター装置が極度に明るくなっていたり逆に明るさ不足になっていても、 表示した画像の暗く塗られた部分も明るく塗られた部分も見えるようにする必要があるのです。 ガンマ値ディスプレイフィルターによりこのような状態で画像表示した様子を体験できます。

[ティップ] ティップ

お使いのディスプレイ装置のガンマ値を変更することなく画像のガンマ値を変更したい場合は、 「レベル」 ツールの説明をお読みください。

5.8.5. コントラスト

図16.48 コントラストダイアログ

コントラストダイアログ


ここで再び医学的な話をします。 コントラスト感度とは僅かなコントラストを判別するための視覚的能力のことです。 白内障 (水晶体が濁り、 網膜を通した光が拡散してしまうこと) や網膜症 (たとえば糖尿病が原因で桿状体や角膜が破壊されてしまうこと) はコントラスト感度の障碍になります。 このような方にとってはたとえばドレスについた染みが見定めづらくなります。

この問題に興味を抱かれた方は コントラスト感度 をキーワードにしてウェブで検索してみてください。

5.8.5.1. オプション
コントラストサイクル

コントラストフィルターを通した画像はあたかも白内障になってしまったかのような見え方をします。 あなたのお祖父さんやお祖母さんが見易い画像になるようコントラストを上げることになるでしょう。 コントラストサイクル を大幅に下げると大抵面白いことになります。 逆に上げると副作用が出るので面白みがありません。 輝度の値を 255 より大きくすると補色が現れます。

5.8.6. 色管理

図16.49 色管理ダイアログ

色管理ダイアログ

このフィルターは画像ウィンドウごとに GIMP の色管理を実施できます。 GIMP の色管理についてもっと知りたい方は GIMP での色管理」 をご覧ください。

5.8.6.1. オプション

GIMP の色管理の設定はすべて 設定 ダイアログのカラーマネジメント (色管理) のページで行います。

5.8.7. 色校正

色を再現する空間はいろいろありますが、 色を無限に発色できるものは一つもありません。 いずれの色空間でも多様な自然の色と同じ色が発色できる一方で一部の色は異なっています。 ガモット とはある色空間の再現可能な色の領域のことです。 色プロファイル により両者の違いを埋め合わせできます。

画像にプロファイルを適用すれば画像を印刷する前から印刷結果と同じ色調で表示できるので便利です。 色校正フィルターを使うとそのような色プロファイルを適用したときの画像の見え方がわかります。

図16.50 色校正ダイアログ

色校正ダイアログ

5.8.7.1. 色校正オプション
プロファイル

このオプションでプリンターの発色能力を疑似体験できる色プロファイルが選べます。 必要なプロファイルがこのリストになければそれを収めたファイルを探し出しここに加えることになるでしょう。 メニューの最後の項目 カラープロファイルをディスクから選択... に進んでください。

方法

このオプションでレンダリングインテントを選びます。 出力デバイスが再現できない色 (ガモット外の色) を要求されたときの対処法を決めたものがレンダリングインテントです。 主に 4 種類あるその方法の違いは Rendering Intent で説明してあります。

黒の生成

印刷物で暗い色を表現するときに黒を使って補うと良好な結果が得られます。



[19] 加法混色モデルをなす RGB 色モデル の原色の順になっています。