付録B バグ報告や改善要求のしかた

目次

1. バグかどうかの見極め
2. バグ報告
3. バグ報告提出後の進展

こんなことを言うのは悲しいのですが、 GIMP はいまだかつて完璧といえる版を提供できた例がありません。 もっと悲しいことに今後もそう言える版が作れることはないでしょう。 あらゆる部分がちゃんと動くように日々努力を重ねてはいますが、 GIMP のような複雑なプログラムは、 不意に混乱に陥りあまつさえ異常終了するかもしれない不安をいつもかかえています。

バグ (不具合) が避けられないのは事実ですが、 それを黙って受け入れるべきだという意味で言ったのではありません。 GIMP のバグが発見されたら、 開発者はどうにかしてそのバグを退治できるようそのいきさつを知りたがりますので教えてあげましょう。

それでは仮にあなたがバグを見付けた、 もしくは見付けたかも知れないと思っているとしましょう。 何か操作してみたとき起こるはずのない結果が出てきたという想定です。 さてどうすればいいのでしょう。 何を報告すれば良いのでしょう。

[ティップ] ティップ

改善要求 (enhancement request 開発者に機能の改善や追加をお願いすること) の手続きはバグ報告の手順とほとんど同じです。 たったひとつの違いは、 その報告にenhancementのマークをつけることだけです。 手続きのなかでそのための場面がありますのであとで説明します。

他の多くのフリーソフトウェア事業と同じく GIMPBugzilla と呼ばれるバグリポート機構を活用しています。 バグジラは Web を基盤として幾千ものバグ報告を絶えず追跡できる非常に強力なシステムです。 事実、 GIMP は Bugzilla のデータベースを Gnome™ のあらゆる事業と共有して使っています。 この解説を書いた時点では Gnome の Bugzilla に 148632 件のバグ報告があり今も増えつづけています。

1. バグかどうかの見極め

バグを報告する前に大切なことは、 遭遇した事態が果たして本当にバグなのかどうか検証する努力を惜しまないことです。 あらゆる場面に通用する検証方法を提示するのはなかなか難しいのですが、 いつもは文献を読めば何とかなるものですし、 IRC 上で質問を投げかけてみたり、 メーリングリストを活用するのもたいへん有益です。 クラッシュ (異常終了) に遭遇したのなら、 単なる動作不良に比べて正真正銘のバグである確率がずいぶん高くなります。 しっかりと書かれたソフトウェアとはそもそもプログラムが どんな 扱い方をされても壊れたりしないように設計するものだからです。 本当にバグなのかいろいろな条件を試しつつ入念に努力して検証された結果なら、 バグと判別できなくてもどうぞ報告してください。 たとえバグではなかったとしても精々、 開発陣の時間がほんのちょっと削られるだけで済みますから。

[注記] 注記

現実には GIMP を異常終了させると判っていながらあまりに面倒で直すほどのことはないと判断されたものが少しあります。 たとえば 1 辺が百万ピクセルもある画像を作成させるといったような、 莫大な量のメモリーを使用する操作を GIMP で行なった場合がこれにあたります。

お使いの GIMP の版が最新のものであるかどうかも確かめておきましょう。 既に修正されたバグを報告したら皆が時間を損するからです。 (GIMP 1 系は維持管理が終了しており一切整備が行なわれません。 バグを見付けられても、 GIMP 2 に乗り換えるか、 [ご自分でソースから修繕して]そのまま使い続けるしかありません。) 開発者版の GIMP を使っている場合は特に、 最新のリリースでも同じバグが発生するのを確かめてからレポートを書きましょう。

以上の注意義務を果たしたうえでなお正当なバグ報告か改善要求といえるものがあるなら、 つぎは Bugzilla の GIMP 用質疑のページ (http://bugzilla.gnome.org/query.cgi) に行き、 誰か他の人が同じ内容の報告を出していないか確かめます。

バグを検索するには単純なFind a Specific Bugフォームか高度な検索条件が設定できるAdvanced Searchフォームのいずれかが使えます。

特定のバグを呼び出し

図B.1 Bugzilla: Find a Specific Bug

Bugzilla: Find a Specific Bug

単純なバグ検索フォームでバグを検索


このフォーム上ではまず Product 欄で  GIMP を選びましょう。 この項目は Others 以下に分類されています。 そのあとは Words 欄に用件を空白文字で区切って

filter crash

のように記入して、 Search ボタンをクリックします。

バグの高度な検索フォーム

隣りのフォームは高度な検索ページになっていて、 いろいろな条件でバグデータベースを検索できます。

図B.2 Bugzilla: Advanced Search

Bugzilla: Advanced Search

高度な検索フォームでバグを検索


このページは実態以上に少し複雑に見えてしまうのが難点です。 ともあれいくつかの項目は詳しいヘルプページにハイパーリンクしています。 最低限ここでやるべきことはつぎのとおりです。

Summary

この引き出しメニューでは contains any of the wordscontains any of the strings を選びます。 [つぎの記入欄に書いた語句の、 いずれかに該当する報告だけに絞るという意味です。]

その隣りの記入欄には、 お探しのバグをひとことで表すときに誰でも使いそうな単語や語句を書きます。 たとえばもし GIMP の表示倍率を極端に上げたときに異常終了が起きる問題があったとするなら、 zoomの語がふさわしいでしょう。

Classification

GIMP は GNOME Desktop suite には分類されませんので、 ここは Other を指定します。

Product

ここには GIMP (あるいは場合により GEGLGIMP-manual) を指定します。

Component; Version; Target Milestone

これらの欄には何もしません。

Comment; Whiteboard; Keywords

今のところはここも手をつけずにおきます。 検索結果に何も引っかからなかった場合に A Comment のところで記入欄に用件を書いて検索してみる価値がありますが、 しばしばべらぼうな数の報告の山になるか何も出てこないかのどちらかになってしまいます。

Status

この欄は現在審議中のバグ報告なのか既に解決済みのバグ報告なのかといった現在の状態で指定するために使います。 関係しているバグ報告なら状態に関係なく全部見たいでしょうから、 枠内をクリックしたまま下までなぞって (あるいは最初の項目をクリックして Shift キーを押したまま最後の項目をクリックして) 全部の項目を選びましょう。 単独のままでは作動しません。

Resolution; Severity; Priority; OS

解決方針、 深刻度、 優先度には普段手をつけることはありません。

(それ以外の項目)

これらの欄には何もしません。

以上の設定が終わったらページの右上か下寄り左端にある Search ボタンのどちらかをクリックします。 どちらをクリックしても結果は同じになります。 現れ出るページにはバグ報告の一覧表が表示される–長過ぎなければいいですけれど–か、 単にZarro boogs foundと表示されるかのいずれかになります。 関係のありそうなバグ報告が見付からなかったときは用件に別の語句を与えて再度検索してみるとよいかもしれません。 思いつく限りの手を尽くしバグ報告を提出したのに、 DUPLICATE(重複) のひとことで解決済みの処理が行なわれてもどうか落ち込まないでください。 同じ処置は頻繁に起こっていて、 Bugzilla で GIMP 関連の業務を担当している筆者のところにはほぼ毎日重複したバグ報告が上がってきています。

[ティップ] ティップ

お使いのウェブブラウザーの設定 (JavaScript有効) により Give me some help と書かれたリンクが表示されます。 このリンクをクリックするとページが読み込み直され、 各項目や記入欄にはマウスポインターをかざしたときに小さなヘルプ表示が飛び出すしかけが付きます。