2. ぼかしフィルター

2.1. あらまし

図17.2 実演用元画像

実演用元画像

ここに挙げたフィルターはいずれも画像の全体もしくは部分にさまざまな方法でぼかしをかけます。 画像に選択範囲があればその範囲内でのみ画像にぼかしがかかります。 しかしぼかしの境界線付近ではぼかしなしの部分の色がぼかしのかかった部分に混ざり込むかもしれません。 このあとはそれぞれのフィルターの使用例を載せますので、 どのぼかしフィルターを選ぶかの参考にしてください。 もちろんここに示したのはほんの一例に過ぎず、 ほとんどのフィルターはパラメーターの設定によりぼかしの加減やぼかしの風合いがさまざまに変化します。

図17.3 ガウスぼかし (半径 10)

ガウスぼかし (半径 10)

いろんな場面で一番よく使えそうなのが ガウスぼかし... です。 (偉大な学者ガウスの名前が付いていますけれども敬遠する必要はありません。 このフィルターは最も基本的な方法で画像をぼかします。) しかも比較的短時間でたっぷりぼかせる効果的な実装が施されています。

図17.4 単なるぼかし

単なるぼかし

ちょっとだけ画像をぼかしたい—そのままの状態で柔らかな雰囲気にしたい—ときには単なる ぼかし フィルターを使ってみる価値があります。 このフィルターはダイアログがなく、 すぐ自動的に実行します。 ぼかしをかけたことに気付かないぐらいのかすかな効果しかありませんが、 繰り返すとどんどん強くぼやけてきます。 GIMP 2.0 以降このフィルターは繰り返し回数を設定できるウィンドウが現れるようになりました。 とはいえ強くぼかすつもりで好みの状態までこのフィルターを繰り返していてはおそらく時間がかかり過ぎます。 こんなときは代わりにガウスぼかしを使うべきでしょう。

図17.5 選択的ガウスぼかし

選択的ガウスぼかし

選択的ガウスぼかし... フィルターはしきい値を設定して互いに類似した色の画素同士だけが混ざりあうぼかしを施します。 写真の粒度を減らす用途なら鋭い輪郭を保ったまま処理できますので便利です。 (この例の画像では背景の粒度が減ったことに注目してください。) しかし実装上ガウスぼかしと比べると処理に結構時間がかかりますので、 選択的なぼかしが必要な場合だけこのフィルターを使うとよいでしょう。

図17.6 モザイク処理

モザイク処理

モザイク処理... フィルターとはよく知られたエイブラハム・リンカーン効果のことで、 画像を正方形の巨大な画素で表します。 (ちなみに芸術的効果フィルターの 油絵化... フィルターも元は同じ効果を利用していて、 こちらはきっちり正方形の画素にせず不定形なかけらの寄り合わせで表現します。)

[注記] 注記

エイブラハム・リンカーン効果については [BACH04] がうまく説明しています。 サルバドール・ダリの地中海を見つめるガラは遠くから見るとエイブラハム・リンカーンの肖像が現れるしかけになっています。

図17.7 モーションぼかし

モーションぼかし

モーションぼかし... フィルターは画像上の位置により定められた方向にぼかしをかけて動きのある絵にします。 直線的一方向、 集中線、 回転の各効果から選べます。

最後の タイル化可能ぼかし はガウスぼかしとまるで変わりませんが、 画像の外縁付近では反対側の辺と連続したぼかしを行ないますので、 この画像をタイル状に並べて文様にするときに継ぎ目が目立たなくなります。

[注記] 注記

タイル化可能ぼかしの実体はガウスぼかしプラグインを利用する Script-Fu スクリプトです。